さて、あなたの精子はどうだろう?男性不妊外来って何をするの?

実際に男性不妊外来を訪れた場合、どのようなことを行うのか紹介しよう。

基本は、問診、視診,触診、精液検査、ホルモン検査(血液検査)。

必要に応じて、染色体検査や超音波検査, MRI検査を実施する。

すでに不妊治療を始めている人は,「あれっ? オレは精液検査しかしてないぞ」と思うかもしれない。

妻と一緒に受診すると、必然的にARTクリニック(産婦人科)を受診することになる。

そこでの男性側の検査は、基本的には精液検査のみ。

詳しい検査が必要な場合には、泌尿器科を紹介される。

また、施設によっては泌尿器科医による男性不妊外来を設けている場合もある。

産婦人科でわかるのは「精子の数が少ない」「運動率がよくない」などの精液検査の結果だけ。

1方、泌尿器科では、その原因を突き止め、適切な対策を行う:しかし、男性不妊の原因がわからない場合も多い。

とにかく、産婦人科での精液検査だけではわかることに限りがあるので,男性は、ぜひ泌尿器科を受診してほしい。

また、泌尿器科医の中でも男性不妊を専門とする医師は,日本全国に約45名程度である。

不妊で悩んでいるなら、それらの医師を訪ねるのがいいだろう。

一般社団法人日本生殖医学会のホームページに生殖医療専門医の一覧があり,泌尿器科医が掲載されているので参考にしてほしい。

繰り返しになるが、ほとんどの産婦人科(不妊治療を行うARTクリニック)では、男性の検査は精液検査だけ。

精液以外のことは調べずに、そのまま対策が進んでいく。

男性不妊外来で診察してもらわない限り、男性は不妊治療の中では「遺伝情報の詰まった精子を提供するだけの存在」として扱われてしまう。

そのため、人間としての側面を見失いがちで、自分を「まるで種馬のようだ」と感じる人は少なくない。

僕のところにも、産婦人科で検査して「男性不妊」と診断されたカップルがやって来る。

「私も検査したけれど、どこも悪いところはない」と誇らしげにしている女性に、僕は少々意地悪なことを尋ねてしまう。

「では、ご主人以外の男性との間で妊娠したことがありますか?」女性はきょとん,である。

つまり、僕が言いたいのは、女性側が検査で問題がなかったからといって、妊孕性(妊娠する能力)が正常だとは言い切れないということ。

妊娠のメカニズムは複雑で、いまだ解明されていないことも多い。

現在の不妊検査だけでは「100パーセント原因がない」とは断言できないのだ。

もし、自分が妊娠可能なことを証明できるとしたら,「他の相手となら妊娠できる(した)」ということだろう。

もちろん、その真実を診察で明らかにする必要はないが。

何よりも伝えたいのは「僕は男性の味方だ」ということ。

男性不妊外来を受診する人の多くは、すでに産婦人科で精液検査を受け、そこで「男性不妊」の烙印を押され、ヴィトックスα 口コミに騙されたのではないかという不安な気持ちに押しつぶされそうになりながら診察室に足を運んでいる。

まずは、その不安を和らげ、正しい情報提供と検査から対策をスタートする。

では,ここから男性不妊外来の検査の流れを説明していこう。

※問診。

診察に先立って問診票に記入する。

生殖はとてもプライベートなことなので答えにくい質問もあるかもしれないが、診断や対策をしていくうえで大事な項目なので,問診票には正直に記してほしい。

医師の目を見て話すのがためらわれる場合でも、問診票になら、わりあい気楽に記入できるだろう。

問診では,問診票をもとに医師が詳しく質問をしていく。

その内容は、年齢や結婚,不妊期間などの基本的な情報にはじまり、性欲や勃起など性機能についてはもちろん、子どもの頃からの病歴、既往症、生活習慣など、広範囲にわたる。

実は、この問診から推測できることは数多くある。

※視診 触診(理学検査身体所見)。

医師が体の様子を目で見て、体を触って、主に外性器を確認する。

下着を下げてベッドに横になった状態で行うが、 静脈瘤の検査だけは立った姿勢で行う。

このとき、寒いと精巣が上のほうに上がってしまい、ちゃんと確認できないため、あたたかな部屋で,あたたかい手で行うのが基本。

※<視診,触診での確認事項>

女性化乳房がないか、体毛の量や分布など→ホルモン分泌異常の可能性。

·鼠径部の手術創→鼠径ヘルニアの手術の形跡。

●外性器の発育程度→ホルモン分泌異常、先天的な疾患など。

精巣容積→極端に小さいと造精機能に問題がある可能性が高い。

また、染色体異常やホルモン分泌異常の可能性もある。

·精管,精巣上体の丁寧な触診→精管を触れない場合には精管欠損症、精巣上体が拡張している場合には精路閉塞の可能性もある。

陰囊の視診,触診→精索静脈瘤が見つかることもある。

·陰茎(ペニス)の視診→尿道下裂が見つかることもある。

これは、胎生期のホルモン異常によるもので、造精機能や射精に影響する。

身長1,ホルモン分泌異常で長身や短身長に。

また、Y染色体に大きな欠損があると低身長のままとなる。

こうした視診,触診からわかることは多い。

たとえば、外性器の形は男性ホルモンの働きを示唆している。

睾丸が小さい (精巣容積が少ない)ときには造精機能障害を疑い、外性器が正常な形態でない場合は先天的な異常が考えられる。

熟練した泌尿器科医であれば、これらの判別はできるが、男性不妊に詳しくない場合は見落とされる可能性もありうる。

そのため、男性不妊専門医への受診が望ましい。

※精液検査。

マスターベーションをしてもらい、採取した精液を調べて、精子の数や運動性などを検査する。

専用の容器を受け取り、施設内の採精室(最近は「メンズルーム」などともいう)でマスターベーションにより採取する。

自宅が近ければ(1時間以内が目安)、あらかじめ容器をもらっておいて,自宅で採取した精液を持参してもかまわない。

ただ、移動時間や保管の状態によっては精子の状態が悪くなるので、できるだけ検査する場所に近い所で採取するのが望ましい。

何をもって正常値とするかだが、一般的にはWHO (世界保健機関)の標準値64記)を目安にしている。

また、不妊治療施設では、独自に基準値を定めている場合もある。

結果が正常値よりも下回る場合は、精子に問題があると考えられ、「男性不妊」とされる。

ただ1回の検査で判断するのではなく数値がよくない場合は何度か検査する。

この数値は、男性の平均値ではない。

セックスをして自然に子どもが授かる場合の最低限の基準値である。

もちろん、これを下回ったからといって妊娠できないわけではないが、妊娠の可能性は低いという目安である。

精液検査の方法は、施設によってまちまちである。

精子の数を数えるのは、機械ではなく人間の目である。

顕微鏡で拡大したモニター画面を見ながら、医師や胚培養士(エンブリオロジス卜/精子や卵子を扱う専門家)が目で見てカウントする。

このとき、マクラーチャンバーという精液検査専用の計算盤を用いることが多い。

0.1㎜四方のマス目がついていて、その中に精子がどれくらい存在するか(総精子数)、元気に動いている精子がどれくらいいるか(精子運動率)、形態が正常な精子がどれくらいいるか(正常形態精子率)などを数え、これを1㎖中の数字に換算する。

WHOの精液検査では、マクラーチャンバーとは少し構造の違う血球計算盤を用いた方法を採用している。

マクラ-チャンバーでも血球検査盤でも、測定の誤差が大きいことが問題だ。

精子の数が多ければ誤差は少ないが、精子の数が少ない場合(男性不妊患者の多くがそうだ)は注意が必要だ。

また、自動精液検査装置にCASAというものがある。

これは、目で精子を数える代わりに器械が数えてくれるもの。

測定原理は人が目で数えるのと同じだが、CASAでは精子とそれ以外の精子に似た夾雑物を判別できないために、さらに誤差が大きくなる。

しかしもっと問題なのは、あたかも「これが正確な値だ」と言わんばかりに、器械からプリントアウトされて出てくるデータである。

これをそのまま渡された患者さんは、数字を鵜呑みにするだろう。

検査結果が正常値のときは問題ないが、悪い場合には完全には信用できないので注意が必要だ。

※ホルモン検査(内分泌学的検査)。

血液検査で各種ホルモン値を測り、ホルモン分泌異常がないかどうかを調べる。

※<検査項目>

T (テストステロン)。

·LH (黄体形成ホルモン)。

·FSH (卵胞刺激ホルモン)。

●PRL (プロラクチン/乳汁分泌ホルモン)。

E2 (エストラジオール)。

テストステロンは男性ホルモン、黄体形成ホルモン (LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)、エストラジオール(E2)は女性ホルモンである。

男性の体でも女性ホルモンはつくられていて、精子形成などに働いている。

これらのホルモンの分泌状態から生殖に影響する病気の推測や生殖機能の推測をする。

また、プロラクチン (PRL)は出産すると母乳の分泌を促す働きがあるホルモンで、男性の場合に過剰に分泌されると性欲の低下や精巣機能が低下する。

このほか,テストステロンが低い場合には、hCG (ヒト胎盤性性腺刺激ホルモン)負荷テスト(精巣機能の検査)やG n,-, RH (ゴナドトロピン放出ホルモと負荷テスト(下垂体機能の検査)などを行う。

※超音波検査。

超音波検査(エコー検査)は、超音波を発信して、はね返る情報を読み取るもの。

陰囊に超音波のプローブを当て,精巣の様子がモニター画面に現れるので、それを観察する。

精巣の大きさ、精索静脈瘤がないかなどを調べる。

また、この検査で精巣腫瘍(がん)が見つかる人もいる。

男性不妊患者では、一般的な男性と比べて精巣がんが多く見つかり、その割合は1000人に1人程度である。

※場合によって行う検査。

※染色体検査(血液検査)。

無精子症や高度な乏精子症の場合に「染色体検査」を行う。

人間 通常は女性が「46,XX),男性は「46,XY」だ。

には46本の染色体があり、46本の染色体のうち22対( 44本)は男女ともにあるため、「常染色体」と呼ばれている。

X染色体やY染色体は、男性·女性を決定している染色体なので「性染色体」と呼ばれる。

女性は44本の常染色体と2本のX染色体の組み合わせで[46,XX)、男性は44本の常染色体と1本の 染色体、1本のY染色体の組み合わせで「46,XY」である。

クラインフェルタ-症候群の男性は、Xが過剰になっている[47,XXY)の染色体を持つ。

この場合は、射精液に精子が見あたらない無精子症になることが多以前は自分の子どもを持つことは難しかったが、現在は、精巣からわずかに産出されている精子を採取して、顕微授精によって子どもを授かる可能性が広が特異な染色体異常として、[46,XX male」がある。

外見は男性であるが、染色体のうえでは女性というもの。

これは、本来は女性であるのに、胎児期に精巣をつくる遺伝子が誤って存在していたために卵巣ができずに精巣ができてしまい、そこから分泌されるテストステロンの影響で外性器が男性になってしまったものだ。

精子形成の遺伝情報はないため、精巣で精子はつくられていない。

健康上は全く問題がなく染色体検査をして初めてわかる。

※精巣組織検査(病理検査)。

精巣の組織を採取し、病理標本を作って行う検査で、強い痛みを伴う。

以前は、重度の乏精子症や無精子症の検査で行われていたが、現在は診断目的では行われていない。

精巣組織を採取するTESE (精巣精子採取術)の実施時に、同時に組織を採取して検査すればいいからだ。

※MRI検査。

脳下垂体に腫瘍があることが考えられるときに検査する。

もし脳下垂体に腫瘍があると(プロラクチン産出腫瘍が多い)、ホルモン分泌に異常をきたすことがある。

精路通過障害が疑われるとき、精巣、精囊、前立腺のMRI検査が行われる。

※レントゲン検査(現在は行っていない)。

レントゲン検査は、男性不妊の人には禁忌である。

以前は、精路の通過性を調べるために、精管に造影剤を流し、X線を撮影する検査が行われていた。

しかし、精路や生殖器にダメージを与えることがわかり、現在は行われていない。

前出のMRI検査は被曝しないため、検査はこれらに取って代わっている。